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横浜スタジアムでの試合は、これ以上ないくらいのナイスゲームだった。

初回、佐野恵太選手はヒットを打ってくれた。

牧秀悟選手のホームラン。

そして何より、石田裕太郎投手の1安打完封。

途中までパーフェクトピッチングが続き、球場全体が少しずつ緊張感に包まれていく。

そんな中、僕は「佐野選手、エラーだけはしないでくれ」と、そればかり願っていた。

野球を観ているというより、親戚のおじさんのような気持ちだったのかもしれない。


もう一人、強く印象に残った選手がいた。

勝又温史選手だった。

当時、連続試合安打を更新中。

けれど、この日はなかなかヒットが出ない。

一塁へ全力疾走してヘッドスライディングする姿からも、その必死さがスタンドまで伝わってきた。

7回裏。

先頭打者として打席に入る。

試合展開を考えると、この日最後の打席になるかもしれない。

連続安打の記録もかかっている。

当然、打ちたい。

そんな気持ちが一番強い場面だったと思う。

それでも勝又選手は、ボール球には手を出さなかった。

きっちりフォアボールを選んで出塁した。

「ああ、この選手はすごい。」

そう思った。

記録がかかっている時ほど、自分を抑えることは難しい。

それでもチームのための打席ができる。

その姿に感心した。


すると、その後打線がつながり、8回裏にもう一度打席が回ってきた。

ワンアウト二、三塁。

今度はレフト前へタイムリーヒット。

やっぱり、必死にやっている人にはチャンスが巡ってくるんだ。

そして、そのチャンスで結果を出す。

勝又選手の姿を見ながら、そんなことを思った。


佐野恵太選手も、ドラフト9位からプロ入りした選手だ。

プロ野球選手になるだけでも、本当にすごいことだと思う。

でも、一軍で試合に出続けること。

結果を出し続けること。

応援され、ときには厳しい言葉も受けながら、その場所に立ち続けること。

その裏側には、僕たちには見えない努力がある。

横浜スタジアムで、その姿を見て改めてそう感じた。


試合の興奮が残ったまま、僕たちはホテルまで歩いて帰った。

奥さんと二人、お互いにユニフォームを着たまま。

ハマスタ帰りの人たちと一緒に、横浜の夜を歩く。

それもまた、試合の続きを楽しんでいるようだった。

ホテルへ戻ると、大浴場でゆっくりお湯に浸かった。

歩き疲れた身体が、少しずつほぐれていく。

部屋へ戻り、窓の外を見る。

最上階からは、まだ照明の点いた横浜スタジアムが見えていた。

さっきまで、あの場所にいた。

佐野恵太選手がヒットを打ち、

牧選手がホームランを打ち、

石田投手が完封し、

勝又選手がタイムリーを打った。

その余韻を残したまま、しばらくスタジアムを眺めていた。

7月7日。

結婚記念日。

横浜で過ごした一日は、忘れられない一日になった。

完璧な一日が終わった。


横浜旅 3部作

▶︎ 第1話「横浜旅のはじまり。ハンバーグと、港の散歩と、34階の部屋」

▶︎ 第2話「横浜スタジアムで、佐野恵太選手を見る日」

▶︎ 第3話「完璧な一日が終わった。」