アカイトコーヒー は瀬戸内海の小さな島『直島』で朝7時から営業している早起きなお店です。

7月7日。

結婚記念日の朝、僕たちは横浜へ向かった。

先月の大阪で買ったローファーを履き、京都で買ったシャツを着ていくことにした。
奥さんも同じように、先月の旅で買った靴とシャツを身につけていた。

旅で買ったものを、次の旅で使う。
それだけのことだけれど、なんとなく嬉しい。

直島を朝早く出て、宇野から岡山へ。岡山からは新幹線に乗った。
僕は村上春樹の『夏帆』を持っていき、隣では奥さんがオードリー若林さんの『青天』を読んでいた。

新幹線に乗る前から、今回は富士山が見えるといいなと思っていた。
けれど残念ながら、富士山は見えなかった。

それでも、新幹線は予定通りに新横浜へ到着した。
今回の旅は、まず移動が予定通りに進んでくれることが何より大事だったので、それだけでかなり安心した。

横浜へ来た目的は、夜の横浜スタジアム。
横浜DeNAベイスターズ対中日ドラゴンズの試合を観ることだった。

でも、せっかくの横浜。
しかも7月7日は、僕たち夫婦の結婚記念日でもある。
試合までの時間も、できるだけ楽しもうと思っていた。

新横浜に着いて、まず向かったのは洋食キムラだった。

お店の前まで行くと、奥さんがトイレに行っていたので、僕は店の外で少し待っていた。
すると、中から店員さんが声をかけてくれた。

「あと1席空いてます。中で待ってたらいいですよ。」

「すみません。連れが今トイレに行っているので」と伝えると、
「いいですよ、どうぞ先に席を確保しときましょう」と言って、先に案内してくれた。

オープン直後の店内はすでに満席に近く、僕が案内されたあと、店頭にはすぐに満席の表示が出た。
しかもその時点では、まだどの席にも料理は提供されていなかった。
たぶん、僕たちのすぐ後に来た人は、そこからかなり待つことになったと思う。

だからこそ、あのタイミングで声をかけてもらえたことが、本当にありがたかった。

食べる前から、もう「このお店は美味しい」と思ってしまった。
実際、ハンバーグは最高に美味しかった。
けれど、それと同じくらい、店員さんの対応が嬉しかった。

横浜に着いて最初に入ったお店で、こんなふうに迎えてもらえたことが、旅の始まりをとても気持ちのいいものにしてくれた。

洋食キムラでの昼食があまりにもスムーズだったおかげで、その後の予定も思っていた以上に順調に進んだ。

新横浜から横浜へ移動し、みなとみらい線に乗り換えて馬車道駅へ。
今回は、せっかくなので移動も少し楽しみたかった。
直島で育ち、田舎で暮らしてきた僕にとって、街中を電車で移動することは、今でもけっこう楽しい。

12時30分前には、もう宿泊するホテルに荷物を預けていた。

ホテルの方々の対応も、本当に気持ちよかった。
横浜に着いてから、洋食キムラでも、ホテルでも、人の対応に恵まれているように感じた。

旅って、景色や食べ物ももちろん残るけれど、最後に強く残るのは、やっぱり人なのだと思う。

荷物を預けたあとは、そのまま赤レンガ倉庫へ向かった。

途中で雨が少し降ったけれど、7月の横浜にしては暑すぎず、結果的には散歩にちょうどいい天気だった。
強い日差しの中を歩くより、少し湿った空気のなかを港の方へ歩いていく感じが、むしろ心地よかった。

予定が思っていた以上にスムーズに進んだことで、気がつけば時間に余裕ができていた。
なんと贅沢なことだろうと思う。

赤レンガ倉庫では、UNI COFFEEでゆっくりした。

そのあと、ヨコハマエアキャビンにも乗った。
ロープウェイのように街の上を進みながら、横浜の景色を少し高いところから眺める。

歩いて見る景色とはまた違って、旅に来た感じがぐっと増した。

戻りは桜木町駅から、みなとみらいの動く歩道を通り、日本丸を見て、汽車道を歩いてホテルの方へ帰った。

最初は、試合までの時間をどう使おうかと少し考えていた。
けれど結果的には、横浜らしい場所を無理なく歩けた。
予定に追われるのではなく、余った時間を楽しむような、気持ちのいい午後だった。

それだけ回って、ゆっくりして、それでもまだ14時30分を少し過ぎたところだった。

それなら一度ホテルへ戻ろうということになり、チェックインを済ませることにした。

本来のチェックインは15時からだったけれど、14時40分頃には受付を始めてくれた。
僕たちだけでなく、周りにいた他のお客さんたちもみんな嬉しそうにしていた。

そして案内された部屋は、最上階の34階だった。

今回は、せっかくの結婚記念日だからと、眺望のいい部屋を予約していた。
けれど、実際に最上階の部屋に入った瞬間、その選択は本当に正解だったと思った。

横浜の街と港を高い場所から眺められる部屋。
この部屋が、今回の旅をさらに特別なものにしてくれた。

余談だけれど、僕はそのホテルを以前にも利用したことがあり、会員登録もしていた。
ただ今回は、ホテルの公式サイトではなく、予約サイト経由で予約していた。

するとホテルの方が、
「どちらから予約していただいても大丈夫ですが、会員情報と紐付けておくと特典が使えることがありますよ」
というようなことを、丁寧に教えてくれた。

こういう案内もありがたかった。

洋食キムラでの声かけ。
ホテルでの荷物預かりやチェックインの対応。
そして、ちょっとした親切な案内。

どれも大げさなことではないのかもしれない。
けれど、旅先ではそういう一つひとつが、とても大きく感じる。

横浜に着いてからの流れは、驚くほどスムーズだった。
そしてそのスムーズさは、ただ予定通りに動けたというだけではなく、行く先々で出会った人たちの対応によって、気持ちよく整えられていったものだった。

夜はいよいよ、横浜スタジアムへ向かう。

けれどその前に、すでにこの旅は、十分すぎるくらい良い始まりを迎えていた。


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