アカイトコーヒー は瀬戸内海の小さな島『直島』で朝7時から営業している早起きなお店です。

同じ産地のコーヒーでも、口に含んだときの印象が大きく違うことがあります。

すっきりと軽やかなものもあれば、果物を思わせる香りや、ふくよかな甘さを感じるものもある。

その違いを生む理由のひとつが、「精選方法」です。

コーヒー豆は、最初から私たちがよく知る豆の形をしているわけではありません。

コーヒーの木には、赤や黄色に熟す小さな果実が実ります。その果実の中にある種が、焙煎前のコーヒー豆です。

収穫した果実から種を取り出し、乾燥させて、生豆として出荷できる状態にする。その一連の工程を「精選」と呼びます。

コーヒーの味わいは、産地や品種、焙煎度など、さまざまな要素によって生まれます。その中で、収穫した果実をどのように処理したかも、味わいを形づくる大切な要素のひとつです。

今回は、代表的な三つの精選方法を、できるだけ分かりやすくご紹介します。

ウォッシュド|果肉を取り除いてから乾燥させる

ウォッシュドは、その名の通り、水を使って果肉やぬめりを取り除いてから、種を乾燥させる方法です。

収穫したコーヒーの果実から外側の果肉を取り除き、発酵などの工程を経て、種のまわりに残った粘り気のある部分を水で洗い流します。その後、乾燥させて生豆に仕上げます。

果実の部分を早い段階で取り除くため、味わいは比較的すっきりとして、それぞれの産地が持つ酸味や香りが分かりやすく表れやすいといわれます。

アカイトコーヒーで定番として扱っているコロンビアやガテマラなどでも、よく見られる精選方法です。

「後味がきれい」「軽やかで飲みやすい」と感じるコーヒーには、ウォッシュドで精選されたものが多くあります。

ナチュラル|果実のまま乾燥させる

ナチュラルは、収穫したコーヒーの果実を、そのまま乾燥させる方法です。

乾燥した後に、外側の果皮や果肉を取り除き、中の種を取り出します。

果実に包まれた状態で時間をかけて乾燥させるため、果物を思わせる香りや甘さ、ふくよかな味わいが感じられることがあります。

アカイトコーヒーで定番として扱っているイエメンモカも、ナチュラルで精選されたコーヒーです。

同じ産地、同じ品種のコーヒーでも、ウォッシュドとナチュラルでは印象が大きく異なることがあります。

ウォッシュドがすっきりと輪郭の見える味わいだとすれば、ナチュラルは果実感や甘さがゆっくりと広がる味わい、と考えると分かりやすいかもしれません。

パルプドナチュラル|果肉を一部残して乾燥させる

パルプドナチュラルは、果実の外側の皮や果肉を取り除き、種のまわりにある粘り気のある部分を残したまま乾燥させる方法です。

ウォッシュドのようにすべてを洗い流すのではなく、ナチュラルのように果実のまま乾燥させるわけでもありません。

二つの方法の中間にあるような精選方法です。

ブラジルでよく見られ、すっきりとした飲みやすさを持ちながら、やわらかな甘さやコクも感じられるコーヒーに仕上がることがあります。

よく似た方法に「ハニープロセス」があります。

蜂蜜を加えるわけではなく、種のまわりに残る粘り気のある部分が、蜂蜜のように見えることから名付けられました。産地によって呼び方や細かな工程は異なりますが、パルプドナチュラルに近い方法として覚えておくくらいで十分です。

マンデリンに多い「スマトラ式」

世界には、その土地の気候や環境に合わせて生まれた独自の精選方法もあります。

インドネシアのスマトラ島で生産されるマンデリンでは、「スマトラ式」と呼ばれる方法がよく用いられます。

一般的なウォッシュドでは、種を覆う殻がついた状態で十分に乾燥させてから、その殻を取り除きます。

スマトラ式では、水分を多く含んだ半乾きの段階で殻を取り除き、その後さらに乾燥させます。英語では「ウェットハル」と呼ばれる方法です。

雨が多く湿度の高い地域で、乾燥にかかる時間を短くするために発達した方法とされています。

マンデリンに感じられる、どっしりとしたコクや独特の香りには、産地や品種だけでなく、この精選方法も関わっています。

インドの「モンスーン」

アカイトコーヒーで扱っているインドのコーヒーには、「モンスーン」あるいは「モンスーニング」と呼ばれる工程を経たものがあります。

これは、果実から豆を取り出す基本的な精選を終えた後、湿気を含んだ季節風に一定期間さらす方法です。

かつてインドからヨーロッパへコーヒーを帆船で運んでいた時代、長い航海の途中で、豆が海からの湿気や風の影響を受けていました。

その変化を陸上で再現するために生まれたのが、現在のモンスーニングです。

湿気を吸った豆は膨らみ、色も緑色から淡い黄金色に変化します。酸味は穏やかになり、厚みのある独特の味わいが生まれます。

厳密にはウォッシュドやナチュラルと同じ意味での精選方法ではなく、生豆にさらに変化を加える特別な工程と考えると分かりやすいでしょう。

スマトラ式もモンスーンも、その土地の気候や歴史の中で生まれ、受け継がれてきた、その土地ならではの方法です。

精選方法を知ると、コーヒーの見え方が少し変わる

ウォッシュド、ナチュラル、パルプドナチュラル。

名前だけを見ると少し難しそうですが、大きな違いは、収穫した果実のどの部分を残して乾燥させるかにあります。

果肉を取り除いてから乾燥させる、ウォッシュド。

果実のまま乾燥させる、ナチュラル。

果肉を一部残して乾燥させる、パルプドナチュラル。

まずは、このくらいの違いを知っておくだけでも十分です。

もちろん、精選方法だけでコーヒーの味が決まるわけではありません。

育った土地や品種、収穫の時期、作り手の仕事、そして焙煎によって、最終的な一杯の味わいが生まれます。

精選方法の名前を、すべて覚える必要はありません。

コーヒーの袋や商品説明で「ウォッシュド」や「ナチュラル」という言葉を見かけたときに、果実をどのように乾燥させたコーヒーだっただろう、と少し思い出してみる。

そして、いつもの一杯を、いつもより少しゆっくり味わってみる。

精選方法を知ることも、コーヒーを楽しむための小さなきっかけのひとつです。